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2012年03月01日
【中高一貫校受検】 2012年度 県立中等教育学校適性検査講評

適性検査に関する全般的なこと

■出題の変化について
今年度も「表現コミュニケーション力」、「科学・論理的思考力の基礎的な力」、「社会実践力」を問うねらいに基づいた知識を直接問わない適性検査らしい適性検査に仕上がっています。昨年ほどではないものの「科学・論理的思考力の基礎的な力」の割合は高い構成になっており、適性検査ⅠとⅡでは、Ⅱの方が受検生の得手不得手を除くと難度が高いと思われます。初年度から2年目にあったような出題数に関わる大きな変更はなく、3年連続して、適性検査Ⅰ・Ⅱとも大設問3問の構成となっています。複数の資料を読み取る力、教科をまたいだ内容、多くの計算などが必要で、1問ごとに解く時間がかかる問題構成も定着したといえます。大設問1問につきかけられる時間は15分と考えると、適性検査Ⅰ問3のリレーのチーム分けを決める問題、適性検査Ⅱ問1の定番のグラフ(帯グラフ)を書く問題、60字から90字の記述など、受検生にとって検査時間に余裕はなかったと思われます。 

■特徴的な出題について
昨年度の音符や楽譜を毛嫌いする子には衝撃的だった問題や、箱根細工、歴史カルタ、東海道と例年出題されていた「神奈川県のご当地問題」といえる出題はありませんでした。昨年度の問題では見られなかったような適性検査Ⅰ問1(1)の社会の統計資料やグラフ、適性検査Ⅱ問1(3)の自由な記述からの出題があったことが大きな変更点ですが、これは変更点というより他の都道府県の適性検査問題でも見られるような典型的な出題例にすぎません。

■問いの立て方について
全体的には、昨年同様に採点がしやすい問題と解答になっていますが、適性検査Ⅱ問1(3)で受検者の考えを60字から90字以内で書かせる自由な記述が出題されました。これは「作文による検査」が今年度よりなくなったためと思われます。また、昨年度出題されなかった社会の統計資料やグラフからの出題もあり、幅広い学習が必要と言えます。

■全体的な難度について
適性検査実施から3年が経過したこともあり、難問・奇問は見られず、出題傾向は落ち着きを見せ、「県立スタイル」は定着したと言えます。その「県立スタイル」はすべての問いに「実践的算数力」が要求され、また6ページにわたりびっしりと埋められた文章や図・グラフを短時間で正確に読み取る力も求められます。十分な対策学習を積んだ生徒にとっても取組み甲斐のある良問ですが、今年は昨年より若干平均点は下がったものと思われます。

2012(平成24)年度適性検査の問題は神奈川新聞社ホームページで掲載されました。
【問題と解答】平成24年度 神奈川県立中等教育学校と横浜市立南高校附属中学校の入学試験

 

適性検査Ⅰ(300点満点)

問1
世界の各都市の気候や食べ物についての問題(90点分) 設問数3 (1)30点 (2)ア40点 (2)イ20点

適性検査実施当初は、比較的身近な内容からのユニバーサルデザイン、タンポポに関する問題など受検生に対する配慮があったオープニングの問題ですが、今年度は電子メールの文からスタートしました。受検生にとって驚きはなかったと思われます。(1)は昨年度出題のなかった社会の統計資料やグラフの出題です。各都市の特徴を説明した文章と、「雨温図」とを比較して、「雨温図」で表された都市を選択するだけなので、緊張せずに丁寧に読むことができれば正解できたと思います。(2)(3)では昨年度の「1里とkmの距離の単位換算」よりも身近な「お金の単位に関する計算問題」の出題で計算もしやすく、取り組みやすい問題でした。

問2
サイクリングコースの問題(110点分) 設問数4 (1)ア30点 (1)イ40点 (2)20点 (3)20点

等高線から土地の高低や山の見え方などについて考える問題は、昨年度の楽譜と比較すると受検生にとって衝撃的ではなかったと思われます。小学校で地図の見方を理解できていれば、社会に関する特別な知識がなくても解くことができます。見た目に惑わされないことが必要です。(2)では立体図形の見方、(3)は太陽の動きなど教科をまたいだ出題でした。

問3
交流会のリレーの問題(100点分) 設問数3 (1)40点 (2)30点 (3)30点

(1)(2)は「科学・論理的思考力の基礎的な力」を問う問題で、(1)は速さの計算が必要になりました。「速さ」も問1(2)(3)と同様の「単位量あたりの大きさ」ですが、県の適性検査では毎年重要な単元です。しっかりと出題されています。(2)は必要な情報から条件を満たすチーム分けをする問題で、作業もともない、難度も高くなっています。(3)は「表現コミュニケーション力」と「社会実践力」を問う典型的な適性検査の問題で、会話文中での司会者の役割を読み取る問題です。小学校での国語の学習活動の1つである「学級討論会」を具体化した出題といえます。

 

適性検査Ⅱ(300点満点)

問1
世界の年齢別人口の問題(95点分) 設問数4 (1)20点 (2)ア30点 (2)イ15点 (3)30点

(1)は、世界の年齢別人口の割合を読み取り、その特徴を理解する基本的な内容です。(2)は、県立中等教育学校の適性検査の定番のグラフを書かせる問題です。初年度「円グラフ」、2年目「折れ線グラフ」、3年目「帯グラフ」と出題されて、今年度は昨年同様に割合の計算を含む「帯グラフ」の作成でした。神奈川県の年齢別人口の割合を表しているグラフをもとに、年少人口の割合、生産年齢人口の割合、老年人口の割合を帯グラフに表現できるかをみる問題で、複雑な手順をふまなければならず、計算の正確さ、問題処理にかけるスピード、正確なグラフの作成などを総合すると難度は標準的ですが、非常に手間と時間のかかる一問です。(3)は、お年寄りの接し方を60字以上90字以内で書かせる問題で、いわゆる自由記述です。身の回りの事象に興味や関心を持ち、それらを課題ととらえて解決しようとする力を問われているといえますが、テーマが取り組みやすいものなので、受検生も書きやすかったはずです。

問2
はん作りに関する問題(105点分) 設問数3 (1)60点 (2)ア20点 (2)イ25点

他の都道府県の適性検査でもよく出題されている米の炊き方に関する問題です。昨年度の「時そば」に関する問題同様に文章からの計算が必要になる出題でした。しっかりと文章を読み取らないと、示された情報がわからず、どうやって手をつけてよいのかわからない問題です。昨年よりも文章は読みやすく、計算自体は複雑ではありませんが、文章やグラフの資料をあわせて考えなければならない問題です。

問3
算数に関する問題(100点) 設問数4 (1)30点 (2)ア10点 イ30点 (3)30点

適性検査Ⅰ問3と同様に、「科学・論理的思考力の基礎的な力」を問う問題です。(1)の適性検査の対策をしてきた生徒なら必ずどこかで解いたことがあり、丁寧に計算できれば正解できたはずです。(2)(3)の円柱の展開図や立体図形の見方の問題です。円柱という形は、他の都道府県の適性検査であまり出題されていませんが、(3)は県の適性検査で毎年のように出題されている立体図形の見方で、問題に見る方向も図に書かれているので、受検生にとまどいはなかった思います。むしろ、(2)で側面の平行四辺形の展開図に貼られた三角形の面積を考える問題は、割合も必要となり、「平面図形と比」の練習をしていない受検生はてこずったのではないでしょうか。

 

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